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浦添史劇 舜天王の誕生 ~かたかしら由来記~

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世世万代の栄えを誓った秀逸な舞台
浦添市の歴史と文化にさらなる誇りが生まれた

琉球王統のはじまりとされる「舜天王の誕生」の史劇が、舞台は1部「琉球舞踊」、2部「浦添史劇」との構成で、去った6月26日(土)・27日(日)に浦添市てだこホールで上演された。

浦添市市制施行40周年の記念事業のひとつとして催されたもので、浦添市長や市議、市役所職員、自治会区長や婦人会長らが演者として舞台に立ち、堂々とした素晴らしい演技と演舞に喝采が起こった。

また「民の平穏な暮らしとは何か?」と、浦添市の未来につながる場面も多々盛り込まれ、多く考えされたことも感慨深い。

浦添の未来は知恵と人望、勇気とやさしさに満ち、明るく輝かしいものであるようにと信じることができ、そして願い、期待を込めずにはいられない演技と内容だった。

指笛も飛び出した
第1部琉球舞踊

1部は、浦添市役所メンバーによる、圧巻たる気高さの「かぎやで風」から幕を開けた。

DSCF0385浦添市役所メンバーによる「かぎやで風」
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女性らしい華やかさで舞台を飾った「ぬち花」は浦添商工会議所メンバー、幻想的でさえあった艶やかな「四つ竹」は浦添婦人連合会メンバー、堂々とした舞いに威厳さえあった浦添市自治会長メンバーによる「秋の踊り」。

DSCF0408浦添商工会議所メンバーによる「ぬち花」
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DSCF0418浦添婦人連合会メンバー「四つ竹」
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DSCF0450浦添市自治会長メンバー「秋の踊り」
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そして、浦添市議会メンバーによる「浜千鳥」も披露された。厚くメイクを施した市議会メンバーが舞台にあらわれるやいなや、会場中に「あいえなー」とどよめきが起こり、指笛が鳴り響く。歓声と拍手と同時に、あんなに笑いの生まれた「浜千鳥」ははじめて見た。

DSCF0389浦添市議会メンバーによる「浜千鳥」
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「見事にそろっているね~」「相当練習したはずね~」「きれいね~」「すごいね~」など、どの舞踊にもみな感心しきり。地謡の音色もやさしく、優れた琉球舞踊の披露。

練習に練習を積み重ねたであろう演者の舞に惜しみない拍手が送られ、会場はあたたかな雰囲気に包み込まれた。浦添市民同士の距離感の近さを感じる、充実した内容だった。

第2部琉球史劇
市制への思いも深まった
素晴らしい舞台

さて、いよいよ史劇。

舜天王は、荒れ狂う海を渡って今帰仁に降り立った「源為朝」を父に持つこと。為朝が再びの旗揚げのため大和へ旅立った後、舜天王(幼年名は尊敦)とその母が、父・為朝の帰りを港で待ち続けたことから「待つ港(まちんなと)」「まちなと」と転じ、「牧港」という地名が名付けられたことなども盛り込まれた。

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「源為朝」役の 金城泰邦さん

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大里按司の妹「真樽金」役は 大村沙季子さん、「乳母」役は 久手堅一子さん

DSCF0476源為朝と真樽金が出会うシーン
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為朝と真樽金の間に尊敦が生まれる(後の舜天王)、「尊敦」役は 興座幹人さん
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為朝を送り出す真樽金
DSCF0490別れのシーン
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舜天がいかに王の座についたか、というシーンもおもしろい。文武ともに備え、母をはじめ人を思うやさしい気持ちを持つ舜天(尊敦)は、そのとき牧港に質素に暮らしていたという。

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牧港で質素にくらす「舜天」(尊敦)と母
「舜天」役は 儀間光男 浦添市長、「母」(真樽金)役は、玉城千枝 さん

その尊敦は、酒宴に明け暮れ、浦添の民をも苦しめる傍若無人な中山王主・利勇の臣下が、老人を威圧し、米俵を奪おうとするところを助けてあげたのだ。その正義感あふれる成敗ぶりに、村の人々が尊敦を浦添按司にと切望するのである。

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利勇の臣下をこらしめる舜天
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村の人々に感謝される
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村の人々が浦添按司にと切望する
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それに応える舜天
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そして、尊敦は村人たちと中山王城に乗り込み、利勇を滅ぼし、舜天王となるのだ。

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中山王「利勇」役は 普久原明 さん

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中山王城に乗り込む舜天

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迎え撃つ利勇

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舜天は村人と力をあわせて利勇を討ち取った

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舞いを踊るのは「島袋光尋」さん

「世世万代に栄えるように」それが、君主たる者の務めであると公言して。

世世万代の栄え、どんなに美しいことであろうか。未来への希望が輝き、またそこに民を守る強さとやさしさがある。舜天を信頼し、我が村の平和と安泰を願った村人の安堵と希望が見える。

現代にも通じる内容を、儀間浦添市長や市議会議員、市役所職員、自治会、婦人会、そして浦添市民が演じたことで、さらに意味が深まった。浦添市民としての市への関わり、そして市制への思いを、観客は充分すぎるほどに現実的に感じたのではないだろうか。

演技の素晴らしさには圧巻され、魅了された。堂々たるセリフと立ち回り。空手や棒術などの気合いの入った演舞。一人ひとりが細かなニュアンスを身体や指先などでも表現しており、あまりの出来に驚き、大きく感動する以外になかったのが正直な感想だ。沖縄芸能を代表する北村三郎氏、島袋光尋氏、普久原明氏らが、素人である出演者を抱くような抑えた間合いと節回しもさすがであった。

DSCF0560間合いやセリフ回し、立ち回りなども素晴らしかった。
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「船頭」役の 北村三郎 さん

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「喜平次」役の 仲村和文 さん

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右は「源為朝」役の 金城泰邦さん

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左は「ナバー」役の 宮城恵子 さん
右は「亀ジャー」役の 比嘉讓治 さん

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左の「真樽金」役は 大村沙季子さん
右は「尊敦」役の 興座幹人さん

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左は 又吉謙一 さん
右は 与那原良明 さん

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左は 比嘉克政 さん
右は 又吉栄 さん

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右は「村頭」役の 喜名奎太 さん
その左は 西原廣美 教育長

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左の空手演舞者は 護得久朝文 さん
右は「利勇」役の 普久原明 さん

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舞いを踊るのは「島袋光尋」さん

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「舜天の母」(真樽金)役は 玉城千枝 さん

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地名の由来、歴史的由来なども多く盛り込まれたほか、後世に残したいうちなーぐちも多く発せられた。

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威風堂々たる舜天王。演じたのは、誰もが気づかなかった(!?)儀間市長!

史劇という、少し斜に構え観劇するイメージは、豊かな演技と内容で、理解しやすく、見応えのあるものとなった。随所に笑いもちりばめられ、飽きずに楽しく見ることもできた。

また、演題の「かたかしら由来記」だが、「くーぶーがっぱやー(こぶの出びたい)」の舜天が、そのこぶを隠すため帯を巻いたというものである。

舜天がコンプレックスのこぶをおしゃれに隠した様子は、チャーミングであり、人が持つ強さ弱さをも表すよう。舜天王のコンプレックスを知った民や臣下たちが、そのコンプレックスを気にさせないようにかたかしらを結った心遣いを感じ、また尊敬する君主・舜天の真似をした様子にも想像が膨らむ。ここにも舜天の愛される人柄があったに違いない。

それから、琉球の武士は「かたかしら」を結うものとなったそうである。「かたかしら」は現在、中央に髪を結ぶかつらの結い方として言葉が使われている。

浦添史劇のなかから、多くのことを感じ、学び、そして暮らしのありようや未来への希望がわいた秀逸な舞台だった。浦添がもつ豊かな歴史にも、さらなる誇りを得た。

浦添の文化の深さと誇りを再確認
そして新たな歴史を刻み続ける

浦添市はこれまで、6回の史劇上演の実積がある。行政側が文化を後押しし、浦添市民である八木政男氏が脚色など総合演出に関わり培ってきた。

今回の史劇上演は、浦添市市制施行40周年記念事業に向けて上演委員会が発足され、急ピッチで事は進められたという。浦添市教育委員会文化部長の下地さんは、「市民総参加でつくっていきたい、という市長の思いからスタートした」と振り返る。11月に議案が出された後、実質3カ月に満たない期間で進行することを余儀なくされたのも事実。しかし「行政だけではなく、市民みんなで祝おう!」と、みなが集結し、士気を高めたという。時間が制約されるなか演目を、1978年(昭和62年)に上演され、当時議員であった儀間市長が出演した「舜天と為朝」に一部手を加え、披露されることに決まったそうだ。

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“市民総参加でつくっていきたい”という思いから今回の舞台がスタートし
上演されることになった

出演者は立候補や推薦など地域力で集め、台本のたたき台を配布した上でのミニオーディションも行われた。「史劇」という難しいジャンルに取り組むことを認識し、参加する熱意を持っていたという。

そして配役が決まり、稽古初日。このとき既にほとんどの人が、自身のセリフを覚えていたというから驚く。下地さん、そして文化課長の當間さんは、好スタートに熱くなったらしい。

當間さんは「八木先生から、舞台演出の指導やうちなー芝居方言の指導を、手取り足取り丁寧におしえていただいた」といい、 週3日の稽古以外に、「自主練習を相当に積んでいた。それを稽古で見てもらい、抑揚や動き、舞台でどう見えるか、見せるか、細かな部分を逐一おしえていただいた。それに反応するみなさんは本当に素晴らしかった」と、努力を讃える。

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脚色など総合演出を行った
「八木 政男」先生 (右)

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熱心に指導する八木先生

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浦添市教育委員会文化部
部長 下地 安広

下地さんは「みなさんそれぞれの仕事を持つなか、仕事と稽古の時間を調整し、ぎりぎりのバランスで参加していただいた。頭が下がる。激務をこなしながら休まずに参加された儀間市長は、立ち回りの練習で手の皮も剥けたと聞いている。ほかのみなさんも相当がんばってくれた」と語る。

また4月末には、琉球歌劇の保持者として、八木氏が春の叙勲、旭日双光章を受賞されたニュースも飛び込み、「八木先生に恥をかかすまい」とみなの意識が一層と高まったという。

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八木氏が春の叙勲、旭日双光章を受賞された

八木氏は「短期間のなか、やればできるということをみなさんにおしえられ、再確認ができた」と語る。

史劇は方言が前提、さらに沖縄芝居には沖縄芝居の方言の使い分けがあり、言葉を重んじるのだそうだ。「侍は侍、農民は農民。それなりの言葉にしなければで きない」といい、演者に対してセリフを録音するなどされたという。「浦添は宮古出身の方が多く、宮古独特の言葉やなまりを持つ。芝居の方言は決まり事が多 く、ちょっと心配していたんだが、みなさん実に見事になりきってくれた。本当にみなさん、すばらしかったねぇ」と、しみじみと感慨を深められた。

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「浦添には史劇で伝えたい多くの歴史がある。今回の史劇のなかにも、伝えたいことがたくさんあった」と八木氏。牧港のこと、舜天王誕生のこと、かたかしらの由来のこと。

特にかたかしらについて、「『かたかしら』は今日まで言葉が残り、使われている言葉。今の若い者は疑問を持たない。何故、言葉が生まれ、今に語り継がれ、私たちはその言葉を使うことができているのか?後世に伝え続けなきゃいかん!と思ってね」と、八木氏は気持ちを込めたことを語ってくれる。

沖縄芝居=史劇を通して、沖縄の歴史をも考える。浦添の文化や歴史に学ぶ。

浦添市民がひとつになる、地域力を高める。進行段取りは全て行政側が行ったというが、日頃の文化振興のノウハウがここに活かされたことも特筆すべきだろう。

観劇された市民からは「この続きがあればいいのに!」「涙が出て、本当に感動した。浦添最高!」「市制40周年に舜天王が演じられたことをうれしく思う」などの感想が寄せられた。

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演者からは「うちなー芝居に対する見方や考え方が変わった」「演技というのは本当に難しい。その人柄になりきろうとしやことが、生き方にも大きく影響を与 えてくれた」「演出の先生、舞台裏方さん、お化粧のみなさん、大勢のスタッフさんのおかげで、よい体験をさせてもらえました」「何にも変えがたい宝物がで きました」などの声。

八木氏は「見るものも演じるものも、王都・浦添の認識があることも大きな力だ。浦添には壮大な物語がたくさんある。多くの由来や歴史があり、そして今があるんだよね」と、誇らしげに語ってくれた。

浦添が集約された、すばらしい舞台に惜しみない拍手を送りたい。

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