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エッセイ - 太陽の光 燦々と浴びて

- 第1回 -

  岩下瑞紀さん

岩下 瑞紀いわした みずき (Mizuki Iwashita)
表現教育者/役者/創作太鼓演奏者


1977年10月東京生まれ。
玉川大学文学部芸術学科演劇コース卒業。
2003年より、沖縄・浦添市文化振興事業「演劇の季節・浦添『結』ゆいゆいキッズシアター」に携わり、地域・沖縄文化に根ざした舞台作りを行う。
「浦添市こども文化連盟 太陽樹(ティダージュ)」「任意団体 浦添ゆいゆいキッズシアター」の設立に関与。
現在、役者・演出家・太鼓プレーヤーとして、国内外の感動舞台作りに活動中。(詳細はこちら


『太陽の光 燦々さんさんと浴びて』


 今日もたくさんの太陽の子どもたちが練習場に集まる。
「学校でこんな事があった!」「朝、お母さんと喧嘩した・・」ウキウキ顔、冴えない顔、今日も太陽たちの表情は十人十色。家庭や学校での様々な思いを、練習の一つ一つにぶっつけ、そしてまた新しい物語が生まれる。

 浦添ゆいゆいキッズシアターでは、小学校4年生〜高校生までの児童・生徒が一緒になって一つの舞台を作る。学校も学年も全く違う。「役者・ダンス・バンド・演出」と分けられたグループも、その時の舞台にどう取り組むかは自分自身で決める。常にお互い切磋琢磨、勿論私も負けていられない。
 私自身が常に「自分自身の向上」を意識して、もっと多くの事を勉強・吸収しなくては!と思わされる。一つは「私が吸収したものは、全て子どもたちに還元される」と思うから。そしてもう一つは、絶えず向上する努力をしていないと、瞬時に子供たちに追い越されてしまうからだ。
 

演劇ワークショップにて


 私達の仕事は「上手い役者やダンサー」ましてや「良い子」を作ることではない。(むしろ練習では、学校の先生が見たら卒倒しそうな程くだらないプログラムを大人も混じって盛り上がっている。)それでも長年やっていると「数年前まであんなに大人しかった子が!?」という子が生徒会や部活の大会、学校行事等で活躍する報告を受け、驚かされると同時にゆいゆいキッズを離れた場所での頑張りにとても嬉しくなる。そして又、負けられない・・と闘志を燃やす私であった。

 意識していわゆる「優等生」を作る気は毛頭ないのだが・・?
 世評で論じられている「今時の子ども」と比較して、一つ気付いた事がある。
 練習中、子供たちは実に良く泣き、良く喧嘩し、そして良く笑う。
「そんな当たり前の事を」と言われるかもしれないが、その当たり前の状態がそれこそ「今時の子ども」には薄らいで来ているのでは・・と内地の教育現場では危惧されている。

 先日の稽古で、あるゲームをした。私が出すテーマ(例えば「丸いモノ」や「三角のモノ」)を部屋の中から探してタッチしようというもの。時計やカバン等具体的な形の他、ちょうど三つの画鋲が三角形に刺さってた!と少し離れていないと気付かない視点も出た。そして私は「何かの通り道」というテーマを出した。「通路は舞台への通り道」「コードは電気や音の通り道」それぞれが「なるほど!」と思う回答が次から次へ。そして一見何もなさそうな場所に座るグループが二組。予想がつかない状況にこちらも期待が膨らむ。
 一つはドアと窓を開け『ここは風の通り道』!そしてもう一つは、本当に何もない「その場」に座り『ここは私の進む道!』 ・・・カッコイイ!!

 最後のテーマは「ありがとう」。
「部屋にある『ありがとう』を見つけて下さい。」というと一斉に子ども達が動き出す。「涼しくしてくれるクーラーにありがとう」「練習会場にありがとう」・・・そして数名の子ども達が集まった所は、見学に来て下さっていた「お母さんにいつもありがとう」! 子ども達とお母さん方の手が結ばれ素敵な輪が出来上がっていた。こんな気持ちを感じさせてくれて、こちらこそありがとう!と温かい気持ちに包まれてその日の練習は終った。

 子ども達は最近、自然について多くの話をしてくれるようになった。「〜に虹が出ていたよ!」「浦添グスクから見た夕陽が綺麗だった!」どれも一見当たり前。だが「周囲の自然を感じる」「隣の人の感情に自分を重ねる」「自分で感じた事を伝えようとする」・・・私達は日々の忙しさにかまけて忘れていはいないだろうか「感じる」と言う事を。そして、子ども達の発想力は大人たちに時折雷の様な刺激を与え、忘れていた多くの大切な感覚を蘇らせてくれる。
 ありがとう、これからも宜しくお願いします。
 小さな太陽の先生達は、今日も浦添を明るく照らす。
 

浦添ゆいゆいキッズシアター 岩下瑞紀

 

 

プロフィール
岩下 瑞紀いわした みずき (Mizuki Iwashita)
表現教育者/役者/創作太鼓演奏者


1977年10月東京生まれ。
12歳の頃から芝居に興味を持ち、演劇について学び始める。
玉川大学文学部芸術学科演劇コース卒業。4年間通して演技と舞台美術を学ぶ。

21歳の時、卒業論文制作のため訪れた沖縄にて、太鼓を使った芸能「エイサー」と出会い、2000年卒業と同時に沖縄に移住。エイサーをベースにした創作太鼓団体の草分け『琉球國祭り太鼓』に所属。国内はもとより、アジア各国・フランス・オーストラリア等世界各地のイベントで演舞。
2005年愛知万博〜愛・地球博〜メインステージにて、エイサー・沖縄文化講座の司会進行を務める。現在も国内外のステージで太鼓を通して沖縄文化を伝える太鼓プレイヤー。

2003年より、沖縄・浦添市文化振興事業「演劇の季節・浦添『結』ゆいゆいキッズシアター」に携わり、沖縄新鋭演出家平田大一の元、地域・沖縄文化に根ざした舞台作りを行う。

2004年、RBC沖縄テレビ放送局30周年記念イベント『現代版組踊り・大航海レキオス』(監修 宮本亜門)出演者オーディションに合格。
2005年春、石垣、宮古島公演の後、沖縄コンベンション劇場での公演に母/妃役として出演。

2005年秋より浦添市こども文化連盟 太陽樹(ティダージュ)の設立に主導的に関与。
演劇、和太鼓、合唱、吹奏楽等、子ども文化団体を合致させた祭り・イベントを手掛ける。

2006年、任意団体、浦添ゆいゆいキッズシアター設立に関与。3月より地域平和劇『浦和Peace☆君とつなげる虹色』脚本/演出を手掛ける。
小学4年生〜中高校生70名と共に、子ども達の舞台を通じてのコミュニケーション、心身育成に力を注ぐ。子ども一人一人と向き合い、本人の持つ悩みや葛藤をインプロ(即興劇)や舞台を通して昇華させ、成長させる子ども達とのやりとりが大きな反響を呼ぶ。
10月公演後、浦添市仲西小学校からの学校公演依頼を受け、12月に同小学校体育館にて再公演。命・家族・人と人との繋がりについて、子ども達が熱演する舞台に多くの人が涙した。

子どもや一般対象の太鼓・沖縄講座を数多く経験、楽しいながらも解りやすい説明に定評がある。
現在、役者・演出家・太鼓プレーヤーとして、国内外の感動舞台作りに活動中。

掲載:2007/12/5

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