浦添の西海岸開発で思うこと |
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浦添の西海岸開発で思うこと・・・「生物を移動させるなど保全はきちんとやる。環境の重要性は分るが、将来の県民生活に寄与する西海岸開発は必要だ」(琉球新報 2009年2月10日)。これは、2月8日の浦添市長選挙で三選を果たした現市長が琉球新報の記者に対して真っ先に発した言葉である。新聞報道では西海岸開発が争点になったと書いてあったけれど、それほどでもなかったんじゃないかなぁ。この市長選もそうだが、同時に行われた市議選挙においても市民に西海岸の重要性をしっかり訴えていた市議候補はどれだけいたのだろうか? 選挙カーでは自分の名前を連呼するだけで政策を訴える人はだれ一人としていなかった感じがするのだが…。ひょっとしてこの論争は避けていたのかな。そもそも多くの浦添市民がこの西海岸開発について何ら疑念を抱かないどころか、関心がないし、ましてやこの海岸の存在すら知らないのではないだろうか。前年を下回った投票率(64.78%)を見るとそんな感じがしてならない。 3月11日に港川小の児童が埋め立て予定地(2014年予定)の西洲海岸からオカヤドカリなどの貴重生物を港川海岸に移植する作業を行った(琉球新報 2009年3月12日)。「絶滅しそうな生き物を埋め立てる前に全部救いたい」と児童が感想を話していたようだけど、ここが埋め立てられたら海流が変わって、せっかく貴重生物を移植した港川海岸だけでなく、宜野湾や北谷の海岸の生物相にも大きなダメージを与えることが十分に想定できる。この移植計画に携わったとはいえ、日頃自然保全について熱く語る「しかたに自然案内」の鹿谷さんはさぞもどかしい気持ちでこの作業を指導していたのだろうね。 浦添西海岸の埋め立て事業について知らない人のために少しだけレクチャーをしてみたい。毎朝那覇市方面に向かって通勤している人は分ると思うけど、朝の8時頃なんか大変な交通渋滞だよね。ラジオの交通情報を聞いていると「国道58号線勢理客交差点を先頭に宜野湾方面から3キロメートルの渋滞!」は当たり前、ついこの前なんか6キロメートルなんていうのもあったりした。聞いているだけでイライラするっ。このようなイライラを解消するため、西海岸線を埋め立てて浦添市西州から宜野湾市宇地泊まで道路で結ぶという計画をしているのだ。さらにもうひとつ、商業用地としてもこの海の9.6ヘクタールを埋め立てて企業誘致をする計画も持っている。そんなことを聞かされてもなかなかイメージが湧かない人は、「ビジネス・モールうらそえ」のポータルサイトから歴史アーカイブ映像をクリックするとその中に浦添西海岸の歩みというものがあるから、さらにそれもクリックする。そうすると、巻末のところで西海岸が埋め立てられた未来の姿が映像として流れる。これでイメージができるはずだ。見ました?どうですか?この埋め立て計画すごいんじゃないでしょうか(また、この計画は浦添・宜野湾市のエリアマップ(昭文社)にもしっかりと載っている)? 「浦添市の土地が増えるからいいねぇ…」と思った方、浦添西海岸をご覧になったことがおありでしょうか? 2月にぼくは久しぶりに妻と1匹の子犬を連れてこの海岸を訪れてみたんだが、即思った、「やっぱり、デージ(とても)スゴイィィ!」と。皆さんも見に行くといいよ。 このキャンプキンザー(牧港補給基地)の裏側に隠れている海は沖縄本島で1,2位を競うくらいの面積を誇る大サンゴ礁地帯なんだから。潮が引くと信じられないくらいの広さで陸地化して、水平線の辺りで白波が立っているから、ようやく縁が分るほどだ。このサンゴ礁には礁原・礁池・潮だまりのさまざまな地形があり、そこにはさまざまな生き物が適応生活している。ビジネス・モールうらそえのVTRナレーションが言う「基地のお陰で、奇跡的に戦前の状態で昔からの海岸が沖縄で唯一残されている大変貴重な海岸である。」は、浦添西海岸が不本意にも米軍基地に守られていることを示しているが、大都市那覇市に奇跡的に隣接する大自然であることは本当で、これはもう称賛する以外に他ない。 海岸を歩くとテラジャー(マガキガイ)の貝殻がまとめられてたくさん捨てられているのが目に入る。この貝の剥き身の刺身はひじょうに美味。中身を取ってここに捨てたんだねぇ。海の幸が豊富にある証拠。感心、感心。 これに触発されて今度は夜のイザリ(潮干狩り)に出かけてみた。海岸に到着すると海から上がってきたばかりで大きな島ダコを抱えたオジさんにいきなり出会った。このオジさんが今日は十分楽しんだからもう帰るって鼻歌交じりに言っていたよ。「アンシ、マキラランさあ(よーし、負けないぞ)!」とぼくもサンゴの海へと足を踏み出してみる。 大潮の干潮だから潮が大分引いていて、満月の光に照らされたサンゴ礁が浮かび上がっている。あまりにも広大すぎてリーフの先まで行く勇気がない。潮が満ち始めたら戻れなくなってしまうからだ。そんな心配があるからすぐに戻れそうな感じのする牧港の沖側へ向かった。 胸まであるゴム長をはいてサンゴ礁の間のまだ引ききっていないところをジャブジャブと歩く。水がすごく透明で海底の様子が手に取るように見えている。でもちょっと残念なことにサンゴがかなり死滅していて一見死んだ海のようにも見える。これは十年程前に世界中の熱帯・亜熱帯海域を襲ったサンゴの白化現象の後遺症なんだね。それ以前は足を入れればすぐにポキポキとサンゴの枝を折ってしまうほどいろんな生きたサンゴで満ち満ちていた。あの頃と比べると今の景観は雲泥の差だが、それでもところどころに生きたサンゴの塊りがあって、ここ数年少しずつだが回復してきた様子。それに呼応するかのようにいろんな魚やウミヘビが安心して泳いでいるし、美味しいシラヒゲウニもいたりして嬉しいことこのうえない。 沖縄の行政が、沖縄観光の魅力や強みを話すときに決まってサンゴ礁の青い海と空を真っ先に挙げることは皆さんよくご存じでしょ。沖縄ブランドのはずの海を埋めて、汚して、いったいこの矛盾は何だって思わない? きれいな海岸を維持すれば、観光客がどれだけ訪れ、滞在日数を増やし、観光総消費額がどのくらいになるのか試算してみるべきだよ。観光立県を宣言しているのなら、それくらいはやるべきじゃない。 人が生活している以上開発は避けられないことは重々承知しているつもりだけど、度が過ぎるのはかなり良くない。現在遊休地化している埋め立て地がどれだけあることか。そんな中、泡瀬干潟などは利用が決まっていないのに「そんなことは知ったことか」と県はどんどん埋めている。 「何故海を埋めるのかって?だってそこに海があるからさ」。県政や市政のトップにインタビューをしたらこんな答えが返ってきそうだね。海を埋めればお金が入るという打ち出の小槌的考えはそろそろ止めてもいい時代になっているんだけど…。浦添の西海岸開発の今後については、ぜひともその進行をオープンにし、市民と行政、一流の土木工学と生態学の専門家らと議論を交わしながら、人と自然の共生を考慮した工法を計画してもらいたい。見直す時間は全然あるのだから。 なんだかんだ言いましたが、とにかく市民の皆さんにこの浦添西海岸を見て頂きたいですね。 西海岸写真集 ※クリックすると大きな写真がご覧いただけます。 キャンプキンザーに隠れて見ることができなかった広大な西海岸
※お知らせ 浦添西海岸で浜下り!家族で楽しく「カーミージー」で潮干狩り!市民の皆さん!大型連休の手前の週末4月24日(金)?28日(火)の5日間は午後12:30頃から15:30頃迄大潮で浦添市の海岸で大規模なさんご礁が顔を出します。 西海岸の埋め立て、架橋工事が行われる前に今回の浜下りで自然の海をご家族で満喫されてはいかがでしょうか?
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掲載日:2009/3/24 |