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トップ >> エッセイ >>空の楽しみ(7) 〜ありがとう、そしてさようなら〜

エッセイ - 空の楽しみ

ありがとう、そしてさようなら

- 第7回 -

井上徹英 (いのうえてつひで)

(浦添総合病院 院長)

山口県岩国市出身 医学博士
広島大学医学部卒業後、救急医、麻酔科医として北九州の病 院に長く勤務し、平成15年に浦添総合病院に赴任。院内改修 事業や救命救急センター創設、ヘリ事業などに携わり、副院長 を経て平成20年4月に同病院院長に就任。
趣味は日韓問題研究や現代思想史研究で、猪木正道氏の評伝などの著書がある。

ありがとう、そしてさようなら

空から見る沖縄の島々の中でもとりわけ美しいのが慶良間諸島である。

慶良間諸島や渡名喜島、久米島をはじめ、本島周囲の離島からの医療専用ヘリコプターによる搬送患者は800例を越えた。医療用ヘリならではの間一髪の救命も決して少なくない。U-PITSとして始めたヘリ事業も、今は沖縄県のドクターヘリとして活躍している。

環礁をなす島々、エメラルド色のサンゴ礁、鯨が群れ遊ぶコバルトブルーの海。この慶良間諸島を空から見ることができたのは、さまざまな苦労を重ねながら医療用ヘリコプター事業に情熱を注いだことに対して、神がくれたプレゼントだと感じる。

決して空からだけではない、ビルの一角から見る夕暮れの浦添の街になにかしら懐かしみを感じ、そして、その向こうのオレンジ色の空と慶良間の島々とのコントラストに息をのむ思いである。せめてもと、撮った写真をお見せしよう。私に、もっと写真のセンスと技術があったならと、この光景に申し訳なく感じる。

慶良間諸島のはるかに沈む夕陽、その左上にポツンと点のように映っているもの、それは、那覇空港を飛び立ったばかりの飛行機である。その飛行機にはどんな人がどんな思いで乗っているのだろう。沖縄の思い出をたくさん胸にした観光客かも知れない、内地へと胸はずませて旅する沖縄の人かも知れない。

縁あって6年半もお世話になった沖縄に今、別れを告げようとしている。連載させて頂いた拙いエッセーも、今回が最後になってしまった。沖縄が郷里ではなく地縁も血縁もない私にいつの日か来るその時が来ただけのことなのに、万感の思いがせまる。うりずんの風も、肌をジリジリ焼くような日差しも大雨も、これが沖縄なんだと今さらに胸に沁みる。

沖縄も浦添も、ありがとう、そしてさようなら。

>> 【エッセイ】 空の楽しみ 第1回

>> 【エッセイ】 空の楽しみ 第2回

>> 【エッセイ】 空の楽しみ 第3回

>> 【エッセイ】 空の楽しみ 第4回

>> 【エッセイ】 空の楽しみ 第5回

>> 【エッセイ】 空の楽しみ 第6回

>> 【特別インタビュー】 救急ヘリ搬送システム「U-PITS」 2007年6月掲載

掲載日:2009/6/25

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