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【防災特集1】大規模災害の可能性 ~ 沖縄は安全と思っていませんか? 琉球大学 仲座栄三教授インタビュー

大震災と大津波に震撼した日から一年以上過ぎ、私たちは災害の恐ろしさを忘れ始めているのではないでしょうか。約250年前の江戸時代末期にあった「明和の大津波」で、石垣島は30メートル超の大津波に襲われました。周囲を海に囲まれている沖縄は、実は他府県に増して災害の備えを必要としているのです。

シリーズで防災についての情報をお届けします。

第1弾は、「東日本大震災から沖縄はどんな教訓を得るべきか」について、沖縄県地震津波想定検討委員会の委員長でもある、琉球大学教授の仲座栄三先生にお話を伺いました。

 

天災は忘れたころにやってくる

Q 3.11大震災に私たちが学ばなくてはならないことは何だったのでしょうか?

仲座「3.11の震災以後しばらく、沖縄にも地震が来るかもしれないが、いつだろうか?沖縄の地震は大きいのか?などいう議論が活発に行われました。しかし防災というのはそういうものではありません。いつ起こるかわからない災害に備えることです。未来に起こる災害とどう向き合い、どのような準備するかになると思います。災害の怖さを知って備えて生きていくことと、知らないまま暮らすこととでは大きな違いがあります。知ること、つまり災害への心構えを、私たちは3.11から学ばなくてはならないのです

Q 日ごろから防災を考えておく、ということですか?

仲座「そうです。3.11は、災害に対して人間ができることとできないことを示してくれました。生き残るためには、できることをどこまでやれるかだと思います」

 

防災意識の向上を

仲座「具体的に言うと、沿岸地域に住んでいる限り100%安全ということはありません。津波を止めることも、避けることもできません。

『津波はいつか来る』ということを前提に、避難できる方法や安全な避難場所を見つけておくこと。少数の人だけが助かったのでは意味がありません。多くの人たち、できれば全員逃げることができること。沖縄には観光客もいるし、米軍の兵士たちもいます。地元の人がどこに逃げるかがわかっていれば、よそから来た人たちも一緒に行動し、助かることができます。そのためには一人ひとりが防災への意識を高めることです。

物理学者の寺田寅彦さんが『災害は忘れたころにやってくる』と言っています。人間はどんな大変な目にあっても時間がたつとつい忘れてしまいます。皮肉なもので、忘れて油断したころに災害は起こるようです」

 

防災の準備は?

Q 実際にどのような対策を取ればいいでしょうか。

仲座「住んでいるあるいは生活している場所について知ることです。まず海抜を知ること。これまでみなさんは、家や職場の周りの海抜に関心を持ったことありましたでしょうか?最近、行政機関などが地域の海抜を記したプレートを貼っていますが、それで初めて海抜を知った人が多いのではないでしょうか。

避難場所を決めてそこまでの道筋を考える。「ずっと住んでいる地域だから、道などよくわかっている」というような考えは捨てましょう。道は時代とともに変わります。

家や職場の周囲を歩いて調べて、高台への道を確認する。市町村が指定する避難場所があれば確認するべきです。ですが、まだ決まっていない市町村が多いようです」(多くが2009年度までに作成、当時のままで未だ見直されていない)


Q 避難場所が決まっていないのは不安ですね。

仲座「自治会、市町村などがその地域の避難場所を指定します。すでに危機感が薄れてしまったのか、組織だって積極的に動くところが少ないように思えます。

県も同様。県が積極的に方針を打ち出したら、市町村が動き、それによって自治会、さらにその下の班も動き、個人の意識も高まると考えます」

 


「スーパー減災マップ」のサンプル
PDFファイル(1.5MB)

Q 避難場所や海抜がわかる地図があれば便利ですね。

仲座「今まで行政が配布してきた『ハザードマップ』は見ても無味乾燥的なもので、「これで10年先の防災を考えろ」といわれてもなかなかむずかしかった。私の研究室では、子どもたちでも関心を持てる『スーパー減災マップ』作りに取り組んでいます。すでに那覇バージョンが完成しています。

よく『パソコンの地理情報システムで大丈夫』と思っている人がいますが、そのようなものでは町全体が見えにくいし、緊急時にはパソコンを立ち上げる余裕もないかもしれません。『子供も含めだれが見てもすぐわかる』そのような地域防災マップを印刷物で作るのが減災の基本といえます。スーパー減災マップは独自の特許技術を用いており、他では類を見ないようなもので、また生活に便利な情報が百科網羅されており、毎日の生活から手放せないような要素を十分に取り入れてありますので、日々の生活に使いながら、減災意識が暗黙の内に身に付くようなものとなっております」

 

標高を赤・黄・青でチェック

Q 実際に津波が起こったときの逃げ方はありますか。

仲座「スーパー減災マップでは、地域を赤、黄色、青に分けてあります。赤は海抜5メートル以下、黄色が10-20メートル、青は40メー トル以上となっております。
避難の際には、いち早く赤の領域を抜け、黄色の部分を超えることが第一の目標となります。その後は、安全を確認しつつゆっくり安全域へと最終避難することを心がけるように工夫されています。

先日ある小学校の避難訓練の様子をニュースで見ていたら、児童全員を率いて学校から一気に40メートル地帯に避難しておりました。かなり距離もあるので全員避難するまでには40分以上かかったようで、『これは大変だ』と先生方は感想を話しておりました。

私の進める避難方法は、まず危険な赤ゾーンからとりあえず黄色20メートルゾーンに逃げることです。20メートルというとビル7階くらいの高さに当たります。必要な時間はおおよそ10分から15分でしょう。そこまで逃げると少しは安全ですから、状況を確認し、もっと逃げなくてはならないときには最終的な避難場所である40メートル超を目指すことが推奨されます。このように、段階的に避難すると、焦らず落ち着いて行動できます」

Q 浦添で危険地域と言うと?

仲座 「浦添市は全体的に高台にある場所が多いです。低い5メートルの赤ゾーンは西海岸側、牧港補給基地と牧港発電所あたり、住宅地域では牧港、港 川、勢理客地区、埋め立て地域では西洲地区。それから津波は川を遡上するので、川沿いの地域は国道58号線を内陸側に超えたとしてもしばらく低い標高が続くので危険です」

出典:沖縄県警察(リンク先はPDFです)

 

経験していなければできない!避難訓練の大切さ

Q とりあえず20メートルまで逃げることも普通の市民は知らないし、またその20メートルがどこにあるのかもわかりません。そういうことを含めて避難訓練は大事ですね。

仲座「そうです。一度もやったことがないことはいざというときにできるものではません。災害でパニックになっているとなおさらで、『避難しろ』といわれてもどこに逃げればいいのか思いつかない。ですので、避難訓練は絶対に必要です。しかし現状では避難訓練への参加者がなかなか集まらない。地域で避難訓練をしても、20代から40代の参加率が悪い。災害時に一番頼りにしたい人たちですが、地震が起こるという危機感が薄れているのでしょうね。

地域での訓練が難しければ、家族や隣近所の人たちなど小さなグループ単位でも集まって、イザと言うときにはどう行動するかを話し合っておくことが大事と思われます」

 

 

 

防災の最大のポイント「情報伝達」 ~ 携帯電話の可能性

 


沖縄タイムス2012年4月12日掲載記事

Q 災害の情報を伝える方法も定まっていないようですが。

仲座「先日の北朝鮮のミサイル騒動では、45分も遅れての政府の発表でした。遅すぎる対応はずいぶん非難されていました。情報伝達をJアラートだったり他の何かだったり、一つのものでだけ知らせようとするのが問題だと思います。また、システムには不具合が付き物、整備して終わりではなく、常に作動するか、不具合は無いかどうか、いざという時のためにシステムの死活監視を怠ってはいけません。今回のJアラート(全国瞬時警戒システム)の様にいざというときに機能しなかったりする事もありますので。

緊急情報は『できるだけ大勢に短時間に正確に伝えること』です。テレビやラジオは今も重要なツールのひとつですが、仕事中だったり、眠っていたり、車に乗っている人には伝わらない。まして津波が発生するような地震の場合、揺れが大きく停電する可能性も高いのでテレビも映らないような状況も想定されます。

防災無線と広報車での災害情報の周知は重要な役割を担っています。しかし100%とはいえません。最近、これらの問題点も議論されています。
携帯電話はどうでしょうか。だれもが持っていて有効なツールだと思います。夜中や車の中でも使えます。携帯電話を使った情報伝達システムがあれば効率的だと考えます。


北大東で送信された防災情報メール

その代り、災害用として特別に作られた専用配信システムでなければなりません。これまで使用してきた普通の(学校等で活用されている)メール配信システムで防災情報を流している自治体も見受けられますがとても危険です。
防災用に開発された専用の情報配信システムでないと瞬時に大量の受信者へ届けることは出来ないでしょう。恐らく受け取る人が最初と最後では半日以上のタイムラグが発生してしまい地震発生から20分で到達してしまう津波の情報を伝えきれないことが十分に想定されます。
又、携帯のメーカーや機種で使えないという偏ったシステムであってもいけません。全てのメーカー機種に対応出来る統一した携帯伝達システムであれば、多くの方々がむらなく瞬時に防災情報を得ることが出来るのでより効果的で安心だと思います。

 

既に、沖縄県内の離島地域では津波・台風などを瞬時に周知出来る防災システムが整備され始めています。例えば、北大東村では、携帯通信を活用し、津波、台風災害を想定した専用防災システムが開発整備され、3.11大震災時にも全国で唯一、津波警報の配信に成功した実績があると聞いております。同システムは北大東村の住民からも評価され、沖縄県は既に他6町村に対して同システムの導入整備を終え活用しているようです。このように県内企業の開発した防災システムが、離島だけでなく本島も含めて全県的に早期整備される必要があると思います。

大規模災害が突如発生しても、安全に住民を避難誘導できるようなシステムとして早く導入整備が広がることを期待しています。いずれにしても災害時の情報は本当に大切で、1つや2つの手段に頼らず、多くの伝達手段を駆使して出来るだけ多くの住民に知らせて避難させることが重要です。情報難民は悲惨です」

沖縄県内の離島で整備された防災情報伝達システム
北大東村 【総務省】平成20年度ふるさとケータイ創出推進事業
竹富町
多良間村
粟国村
渡嘉敷村
南大東村
【沖縄県】平成22~23年度離島地域活性化情報通信システム整備促進事業

 

Q 情報伝達が携帯電話だと、若者も受け入れますね。

仲座「災害時でも訓練時でも20代、30代の人たちをどう動かすかが鍵となります。避難訓練などのチラシを掲示板に貼っても彼らはほとんどみません。どうしてこなかったのか聞いてみたら、『知らなかった』と言います。チラシや張り紙は若者にあまり見られていないといえますね。

私は研究室の学生たちへの連絡にメールを使います。日ごろから、彼らに必要な情報を送り続けています。普段から使っているメールだから、イザと言うときも機能を発揮します。どんないいシステムがあっても、常日ごろ使わなければメンテナンスできていないことになります」

 

生き方を考え直すチャンス

Q 3.11震災はいろいろなことを示唆しているのですね。

仲座「生き方の根底を示してくれたと思います。その声を受け入れない人がいることは本当に残念です。
たとえば沿岸の開発地域に対し、『災 害を心配していたら開発ができなくなる』と行政担当者が話したりします。私はそうではないと思います。物事を知って対策をとることができれば、沿岸でも災害に強い町作りが考えられます。ところが、3.11で大きな被害を被ったS地区は、歴史上何度も津波に襲われていたにもかかわらず、海岸の防風林を切り倒して海の側に宅地を作ってしまった。津波で町は完全に消えました。

宮城県名取市。津波により破壊された住宅街。

T地区は立派な防潮提を作り、どんな大津波でも半分はここで防げると考えていました。つまり半分は越えることも想定していたのですが、越えた後の津波がどんな動きをし、どのような被害をもたらすかまでは議論しなかった。残念なことに、ここでも築いたものの全てを流されてしまったのです。

岩手県釜石市両石町。右下にいる人間の大きさで、この防潮堤の規模がお分かりいただけると思う。
正確には12メートルの高さがあるのだが、津波はそれすら乗り越えた。
左側には津波で押しながらされた家屋の土台が残る。

 

岩手県釜石市両石町。この巨大な防潮堤を、津波は乗り越えてきた。

 

岩手県釜石市両石町。巨大な防潮堤にもかかわらず、無残に破壊されている

また、日ごろから避難訓練をしていたA小学校の児は全員助かりましたが、避難訓練をしていなかったB小学校では、多くの児童が犠牲になりました」 こうした教訓の声に耳を傾けることが大変重要なことと言えます」

津波により破壊された校舎(鵜住居小学校)

 

東中学校と、隣接する鵜住居小学校では、迅速な避難が功を奏した。
小学生たちは、中学生の避難を目の当たりにしたことで避難を開始し、生徒のほぼ全員が被災を免れることができた。
上記が生徒たちの避難経路である。

 

生徒たちは、川沿いの道を矢印の方に向かって避難を始めた。

 

右手に見えている山の向こう側に学校がある。生徒たちは高台に向かう道を、矢印のように進んだ。

 

被災地から学んだ教訓を無駄にしないこと

Q メッセージを謙虚に受け止めなくてはならないですね。

仲座「『真理は汝らを自由にする』という言葉があります。「物事を正しく知ることは、新しい対策や新しい知恵、新しい生き方を生み出す」と解されます。災害に強い安全安心な町を次の世代に引き渡すためにも、災害について知り、学ぶことです。これは一般の住民だけでなく、行政のみなさんも同様だと思います。

私たちは、東日本大震災が教える稀有な教訓を無駄にせず、これから沖縄地域にも必ずや起こるであろう地震津波が起こす大規模災害に対し、悠長に構えず、日々の生活の中で、津波に対する自発的な工夫が必要です。東日本の被災地では、ほんの僅かな高低差が無事と惨事とを分けたのです。3.11では町が全壊の中にあって『犠牲者ゼロの奇跡』を伝えている所もあります。その奇跡から私たちが学ぶべきことは、惨状の中にあても、『間違いなく我が子、我親は大丈夫』と信頼しあえるほどに、日々の生活の中で対策が出来ていなければならないということです。

両石町の防潮堤を海側から見た景色

 

津波はこの高さまで来た。

 

上の画像より更に高い位置で、津波はこの辺りまで達した。
単なる波浪ではなく、水量としてこの高さまで来るのだから、その規模とエネルギーは想像を絶する。

 

なお、下に掲載した動画は、動画投稿サイト「YouTube」で見つけたものだが、上で紹介した両石町が、津波に襲われる瞬間の映像である。
まさに被災している最中の映像なので、視聴により気分が悪くなる恐れもあるので、再生は自己判断でお願いします。

 

先に説明したとおり、これまで行政が作成したハザードマップでは、自分が何処にいて何処に逃げたらいいのか?がとても分かりづらく頭に入れにくいものでした。

琉球大学工学部仲座研究室では日々の生活の中で便利帳として利用され、見ているだけで知らぬ間に避難場所へのルートがイメージできるマップとして、脳裏に刷り込まれていく様な減災マップを急ぎ整備すべく民間と共同研究開発を進めております。那覇地区は先日完成し発表しました。浦添・宜野湾地区の減災マップも現在制作中で間もなく出来上がります。

このマップは様々な工夫を凝らし、お年寄りから子ども達まで即活用できる様になっています。これが、市民一人ひとりの防災対策に対する意識改革の礎とな り、防災周知システムと連動した避難訓練や防災教育などに役立てられ、沖縄発の効果的な避難訓練や減災システムとして普及するということに派生したならば 幸甚です」

(4月16日琉球大学仲座研究室にて)

出典:東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会

 

“私たちも、沖縄の防災対策推進を応援しています。”

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