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中国の少林武術を活かした人づくり・まちづくり・観光づくり 下地 安広(浦添市教育委員会文化部長) ビジネス・モール うらそえ 開設満8周年記念特別企画『投稿エッセイ』「大好きな沖縄へのメッセージ」

下地 安広 (しもじ やすひろ)
(浦添市教育委員会文化部長)

1957年沖縄県石垣市生まれ              
1984年浦添市教育委員会採用
2001年沖縄国際大学大学院修了
2003年浦添市教育委員会文化課長
2007年浦添市教育委員会文化部長
2015年1月現在、同役職

新年明けましておめでとうございます。そして「ビジネス・モールうらそえ」開設満8周年おめでとう御座います。末広がりの八周年、さらなる飛躍発展を期待します。

新年の初め、沖縄の歴史に関心のある方にはとても興味深いシンポジウムが1月25日に催されますのでその事について少しお話したいと思います。

皆さんご存知のとおり空手は琉球王国時代に沖縄固有拳法として生まれ、明治以降に空手として一般に発展普及してきた沖縄発祥の武道であります。この事業では、その沖縄発祥の空手が「成立過程で中国武術の影響を受けた可能性がある」と仮説を立て、どのように大陸からの影響をうけながら独自武術を形成してきたのかを歴史的な面から変遷をたどる調査研究を行ってまいりました。
その調査には専門家の空手研究者、中国武術研究者、空手家、中国武術家等の方々にご協力いただき空手と中国武術の学術調査及び演武交流を約2ヵ年半にわたり行っています。

平成25年度までの調査で中国福建省泉州にあったとされている泉州少林寺を中心に調査と武術交流を行い。さらに平成26年度10月には中国少林武術の発祥地と伝えられる中国河南省にある嵩山少林寺等で調査と武術交流を行いました。

 

私は運よくその調査・交流に同行する機会をいただき、中国鄭州市・登封市の少林武術を活かした人づくり・まちづくり・観光づくりを間近で見ることができ貴重な体験をさせて頂きました。そこで行われた催しの歓迎レセプションでのケタ違いなスケールの大きさにおどろき、大じかけの演出に感動しました。その様子もご紹介しながら中国からの空手への影響を探ります。
嵩山少林寺は大ヒットした映画「少林寺」の舞台となったところで、映画に映っていた少林寺の山門をはじめ高僧の墓所である塔林や寺院の建物がかず多くあり映画のワンシーンをほうふつとさせます。最近は2010年8月に嵩山少林寺がユネスコの世界遺産に認定されたことも相まって世界各地から観光客が増えているらしいのです。

現在、嵩山少林寺は中国の河南省登封市(とうふうし)に所在しますが、行政統括は隣接する人口約760万人の鄭州市(ていしゅうし)が所管しているとのこと。
私たち調査団は鄭州市が2年に一度催している中国鄭州国際少林武術大会にオブザーバーとして参加しました。そして大会参加者(約3千5百人)は各ホテルから大型観光バスにのり会場の嵩山少林寺にむかったのです。途中ところどころに武術学校が見え、登封市に入ったころには武術学校がとなり合わせ、さらには、むかい合わせがつづくと云った風景へと変わって行きました。

 

しばらくすると私たちが乗ったバスはゆっくり停止。10から15分すると大会参加者がのった約80台のバス以外は道路から車がなくなり、再びバスはゆっくり走りだしました。
車窓から見ると道路片側に生徒が3・4列にならび、少林武術や太極拳などの歓迎演武が始ったのです。バスの走行はゆっくりでありましたが歓迎演武はと途切れることなく延々とつづき20分前後で嵩山少林寺にとう着しました。がこのとき、生徒とはいえ、動員された生徒の想像だにしない数の多さと集団演舞のすごさに唖然とさせられました。

嵩山少林寺の会場では2カ所の舞台や寺院内の大広場、園路などで各武術学校の歓迎演武が行われる中、寺院内を見学。特に舞台の集団演武と大広場での一万人集団演武は圧巻でした。一方、園路では低学年生の可愛いらしい演武と たしかな技を見ることができました。その後、私たちはバスで移どうし少林武術と音楽をゆうごうさせた「音楽大典」を野外劇場でかんしょうしました。

 

関係者の説明によれば登封市や鄭州市内には武術学校は私立をふくめ百校以上で1校あたりの生徒数はおおいところで三千人をこえる学校もあり、小学生から入学して武術科目を実技として学びながら一般的科目も学んでいるとの説明。また、バスで見た今回の路上演武は、各武術学校の生徒約8万人で距離にして約十数kmもあったと聞き想像はしていたものの、あまりのケタ違いの動員におどろきました。

 

さらに、歓迎レセプションの舞台「音楽大典」は、実物の二つの山(正確には丘)と谷を背景に小川や建物、橋などをほぼ実物大で舞台セットした野外劇場で、その規模のあまりの大きさにビックリ!客席も私たち大会参加者約3千5百人が入ってよゆうのある客席数をゆうし、舞台客席ともケタ違いの規模でした。さらに、舞台に立った役者や演奏家もレベルは高く、ふだんから「少林武術ショー」がエンターテイメントとして興行化されているそうなのです。

登封市と鄭州市では少林武術の伝統を嵩山少林寺の修行僧等が保存継承することで行政政府と民間は、地域特色を活かした武術学校を百校以上も建設して少林武術を活かした児童生徒の育成にとり組んでいるようなんです。

 

また、両市では生徒の武術習得を充実させるため地域や世界規模の少林武術大会を企画開催して育成向上を積極的に行っています。そして、行政の体育局と武術協会が武術の段や資格の付与などの育成管理を担っているようです。

その一方で、両市は少林武術舞台のための大規模な野外劇場を建設し、芸術性の高い「少林武術ショー」を公演する舞台芸術づくりと観光産業づくりにもとり組んでいました。

沖縄空手の現状を見ると、近年は首里城御庭(ウナー)の演武会、空手世界大会の沖縄開催、国際通り空手演武会、空手道開館の建設の報道を新聞やテレビ・ラジオなどで見聞きしますが、中国河南省鄭州市の少林武術の事業展開を直に見た一人としては、空手を活かした沖縄県づくり(人づくり・まちづくり・観光づくり)には中国から学ぶ事が多くあると感じた次第です。

さらに、今回の調査団に同行した収穫として、空手にかぎらず、エンターテイメント性を持つ歴史文化事業に於いては沖縄が持つ可能性を引き出し、民間も交えて事業拡大することを考えた時に行政の立ち位置や、民間との連携などは大変参考になると思えました。

結びに、空手のルーツを探る事業の最終年度の後半を迎え、「沖縄空手の成り立ちの過程で中国武術の影響を受けた可能性が考えられる」とした仮説の件はどうなったのか?
これまでの中国での調査・武術交流などを通して浮き彫りになってきた事柄から見えてくる空手への影響を話し合う「空手のルーツを探るシンポジウム」を行います。
歴史とあいまって空手関係者の専門家らが見た大変興味深い変遷をたどる面白さがあると思います。これも沖縄のアイデンティティー形成に深く関わったことなのかも知れません。

平成27年1月25日(日曜日)に中国福建省泉州市等から南少林武術の研究者と演武者を迎え、浦添市てだこホール(小ホール)で午後1時30分から「空手のルーツを探るシンポジウム」を開催。

特に沖縄の歴史や沖縄空手の起源に興味をお持ちの方には当日のご来場をお勧めいたします。

「空手のルーツを探るシンポジウム」の情報はこちらから>>

 

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