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企画特集第22回 ‐リゾートのような景色の中で、人間の尊厳を重視した終の棲家
リゾートのような景色の中で、人間の尊厳を重視した終の棲家
スタッフとご入居の方、心と心の豊かな介護生活
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今や多くの人にとって身近で、ときには差し迫った悩みである高齢者介護。牧港の丘の上「ポート・ヒロック」(「港が見える小さな丘」)というステキな名前の老人ホーム介護棟には、介護が必要な38人の方が生活しています。
「いくつになっても心豊かに積極的に人生を謳歌してほしい」がここのコンセプトですが、どのような時間が流れているのでしょうか。
高齢者にとっての良質の介護とは?介護の現場で働く人たちの考え方は?
介護現場のイキイキとした声をレポートします。
お話を聞いたのは
宮城 孝子さん(管理部長) |
鳩間 美奈子さん(施設長・看護師) |
ご入居の方3人に対して2人のスタッフ
手厚い介護体制
国基準の倍のスタッフ数
Q.スタッフが国の基準の2倍ということですが、現在、入居者の方とスタッフの割合は?
宮城
介護保険で要支援から要介護5の方まで、現在の入居者は38人。一番若い方は71歳で、最高齢は96歳、平均が86歳です。6割が女性です。
スタッフは看護師13人、介護福祉士12人(パート46人)、ヘルパー2級の常勤者70人(パート9人)で、ご入居の方3人に対してスタッフ2人というこ とになります。国の基準は3人につき1人ですから、計算で言うと倍ですね。でも常時それだけいるというわけではなく、夜は活動が少なくなるので、スタッフ も少ない人数で対応しています。
鳩間
夜間の見回りは2時間ごとで、病院と同じです。ベッドのそばにナースコールがあるので、何時でもトイレなど要望があれば鳴らしてもらっています。スタッフがそれだけいるので、トイレにいかれるのを何十分もほったらかすなどということは絶対ありません。
一日の中で一番忙しいのは、起床時間と就寝前、そして食事の前後の時間です。食事の介護、食後の口腔ケアとつきっきりとなることもあり、スタッフもそれだけの人数が必要です。
理想の介護施設を追求
宮城
私はオープンからいますが、モデルになる施設が県内にはなく手探りでした。一般的に有料老人施設は郊外が多く、浦添のような都市部にあるのは少ないのです。県外の施設も見学しましたが、沖縄とは事情が違ってあまり参考にならないこともありました。
試行錯誤しながら一番いいと思った形でオープンしてベストを尽くしてきましたが、次第にご入居の方が増えスタッフも増えると、また違ってくる。ご入居の方 への時間のかけ方も大勢になってくるとお一人に掛かりっきりというわけにはいきません。手がかからない人もいれば、介護度の高い人もいるので、どなたにも 平均同じ時間をかけることはできません。客観的に平等に、というのでしょうか。
ご家族が私たちに求められるクオリティーは、他の施設に比較して高いと思います。従って職員とご家族との話し合いが重要になり、必要な場合は頻繁にお会いして、お互いに理解し共通認識を高めています。
家族と施設の使い分け
宮城 介護度が高くなり、家族だけでは限界と入居を希望される方は少なくありません。認知症がひどくなると暴言を吐く方もいらっしゃる。家族で介護されていると、毎日それに向き合い耐えるのはとても辛いと思います。そういう方はぜひ施設を利用して欲しいと私は言いたいです。 ご家族が面会に来られるのを見ていますと、みなさん満面の笑みでご家族を迎えていらっしゃる。施設の存在価値がここにもあると思います。普段のお世話は施設でいたします。人生の残り楽しい時間、幸せな思い出をご家族と作っていただきたいのです。 |
看護と介護、病院と施設の違い
鳩間
私は病院から来ましたから、病院と施設の違いに最初戸惑いました。病院は治療を重視しますが、ここは生活の場です。病気の治療ではなくケア、日常生活の援助です。
またスタッフとご入居の方の関係も違います。入院患者と看護師は一時期のふれあいで退院されれば一旦看護は終了します。こちらではポートヒロックのご入居の方は終の棲家としていらっしゃるので長期間にわたる日常生活全般に関わるので、スタッフの姿勢も自ずと違ってきます。
宮城
認知症の方の対応も病院とは違いますよね。
施設としてはその方の身の安全を一番考えます。でも私たちにとって危険回避になると考えることが、実はご本人には不快になる場合もあるのですね。できるだけ不快を与えず安全にと考えるのですが。
鳩間
病院ではあくまでも治療が優先なので認知症の方だからといって優先を変える事はありません。やむおえず強引に押し進める事も応々にしてあります。
しかし、当施設の場合は理念にも掲げている入居者の尊厳を重視するという基本姿勢で柔軟な対応を心掛けています。それはどんな事かと言いますと認知症の方 の意に反せずにこちらのペースへもって行くという事です。スタッフも試行錯誤しながら対応しています。認知症のケアはまだ発展途上にあるのでケアを標準化 したり方法論を確立させるまでには時間がかかります。
宮城
同じ介護度の方でも、手を貸すのは最小限でいいとおっしゃる方もいれば、できるだけ手伝って欲しいと望む方もいます。おしゃべりが好きな方もいれば一人が 好きな方もいます。介護は標準化、マニュアル化ができないんですよね。人間が相手だから、いつもその場その場、臨機応変での対応が要求されます。それが介 護のおもしろさというか、やりがいだと思います。
豊かな生活をエンジョイ
日常生活からイベントまでいつまでもワクワク
家族に代わってお手伝い
Q.豊かに生活を楽しむイベントや快適な生活の援助体制も整っていますね。
宮城
ご家族が近くにいらっしゃらない方も多いので、日常の細々としたことをスタッフが手伝っています。たとえば着替えの洋服が必要だとおっしゃるときは、何が必要か伺ってスタッフが代わりに買いに行く「買い物代行」。郵便物の処理、銀行の手続きなどです。
鳩間
お部屋のクーラーの温度調節もナースコールで呼ばれて対応します。リモコンを扱うのは難しいですからね。「暑いからもう少し下げて」とおっしゃる。
通院の付き添いも、他の施設ではご家族がしなくてはならず負担だと聞きますが、ここでは職員が同行します。歯科や眼科と、毎日ほとんどどなたかが通院されています。
宮城
突然熱を出されたとしても看護師が判断できるのでご家族を呼び出さなくてもある程度対処できます。夜間の体調不良時も母体である海邦病院の当直医と連絡を取りながら無用な救急搬送を避けることができるため夜間呼び出される家族の負担も少なくなります。
理学療法士が機能訓練
宮城
要望が多かったので、今年の9月から理学療法士がスタッフに加わりました。それまでも介護スタッフが機能回復訓練をしていましたが、普段接しているスタッフと「専門家の先生」では、みなさんの意気込みが違います。先生が担当するんだと張り切って参加しておられます。
機能回復訓練でもそうですが、健康に関してはみなさん真剣に考えて努力されているので、立派だなとそばにいて思います。
コラム
西里健太さん(理学療法士) 週二回、ご入居の方には機能回復訓練を受けてもらっています。 歩く、物につかまって立ったり座ったりという基本の動作が再びできることにより、日常生活が少しでも快適になればとお手伝いしています。 |
県内初!選べる食事メニュー
宮城
食事は楽しい時間です。そこでこちらでは毎日のメインのメニューをご自分で選んでいただくことで、食事をより一層楽しんでいただけるようにしています。メニューを選択できるのは、県内で初めてだそうです。
栄養士が週一回、お部屋を回って聞き取りをします。三食パン食というモダンな方もいますよ。この年齢の方は食事はきちんと召し上がりますね。長生きの秘訣でしょうか。肉が好きな人が多いのは沖縄ならではでしょうか。
季節に合わせてイベントメニュー
宮城
敬老の日や母の日、お雛様などのイベントの日に出す特別メニューは好評です。器もそれに相応しく変えるんですよ。お重などの蓋をとると「わ~!」と歓声があがって、私たちもやってよかったとうれしくなります。
イベントメニューの内容で栄養士がリクエストを聞き取りすることがあります。人気はお刺身と天ぷら。そうなんですよ、刺身もメニューにあるのです。刺身を出せる施設はきっと少ないでしょうね。施設内に厨房があるからできることです。
生きがい発見、サークルとレク
宮城 趣味を楽しむサークルがいくつかあり、希望者が参加します。シーサーを作ったり習字、フラワーアレンジメントなど工芸やアートで、専門の先生に毎週来てもらっています。初めてされる方もいますし、プロ顔負けの腕前の方もいらっしゃいます。 レクは毎日午後にあります。簡単な道具を使い身体を動かしたり歌ったり、ゲームをしたり楽しむ時間。人気があるのはテーブル卓球、シーツバレーボール、ペットボトルを並べたボーリング、カードゲーム、コーラスも参加者が多いです。勝負を付けるゲームは盛り上がります。 レクには認知症の人もどんどん参加してもらいます。刺激になるのでしょうか、認知症の治療に効果があるように思います。レクだけが理由ではないでしょうが、介護度が2から1に改善された方もいらっしゃいます。 |
コラム
サークル紹介 シーサーづくり、習字、 フラワーアレンジメント、 紅型、手工芸 |
スタッフに聞きました
Q.介護の仕事、やりがいがありますか?
人とつながる、豊かな仕事
高齢者の介護は身近に迫らないとなかなか実感できないものです。職場でいろんなケースを見て、これから私が迎えるだろう親の介護のヒントにもなっています。同時にご入居の方である大先輩方の生き方から、何十年か後の私のことも考えさせられています。いい年を取るためには、今を大事に生きようと日々思います。 介護の仕事とは、人との触れ合いです。それまで頑固一徹で心を閉ざされていた方が、何かの拍子に心を開いてくださり親しくお付き合いが始められると本当にうれしい。私自身の自信にもなります。こんなにも豊かな仕事なんだと、今更ながらに実感するこのごろです。 |
宮城孝子さん(管理部長) |
鳩間美奈子さん(看護師) |
私自身を考える人生道場
病院から施設に来た当初は違うことがあまりに多くカルチャーショックで戸惑いました。でも周りのスタッフも含め、知らない世界に触れ合うことがとても勉強になり、今やりがいを感じているところです。 将来、自分の老後について考える教材がいっぱいあるというのも他では得がたい経験です。今後の自分自身や生き方を考えさせられる、「人生の道場」みたいな職場ですよ。一生続けていきたいです。 ますます高齢化社会を迎えますが、終の棲家として満足していただけるよう頑張ります。 |
ポートヒロック
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